01.私の決意と彼の決意

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――だからそうやって、これ以上私を魅了しないでよ。 「……要らない。帰る」 温かいそれを払い退けて、私は無理矢理外へ出た。 彼の温もりなんてものは、ホラ。こうやって風に晒されればすぐに、何処かへ消えていくんだから。 そもそも私が未だに独り身なのは、私にばかり非がある所為じゃない。だからと言って今までお付き合いしてきた人の中に、大きな何かがあったわけでもない。 お互いに然して問題がなければ、普通なら良好な関係を築き上げている真っ最中なはず……にも関わらずにそれが出来なかったのは高宮雄飛、私の目の前にいるこの彼のせいだ。 あの馬鹿はどこで情報を仕入れてくるのか、どうにかお付き合いという形まで結びつけた相手とのデートに必ず偶然を装っては鉢合わせて、そして相手に不信感を抱かせて去って行くを繰り返した。 最悪なのはそこに、職権乱用してくること。 「……またムカついてきた」 普通の幼馴染として出会う男なら、雄飛が間を割って出てきたところで然程問題はないだろうけれど、彼は俳優という職業を背負っている。 しかも今はテレビや雑誌で見かけない事の方が少ない程の売れ具合だから余計に、相手を不安にさせてしまっては、後(のち)にそれをどんなに弁解したところで疑念が消されることはなく、結果毎度の如く別れを切り出される始末。 「………」 ――だから私は、決心する。
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