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窓から私を見ていたのはクラスメイトの高城雅哉くんだった。
一ヶ月前、関西から転校して来た高城くんは背が高くてかっこよくてユーモアがあり、尚且つ聞き慣れない関西弁を喋るということで早々にクラスの人気者になっていた。
地味で根暗な私は高城くんを囲む陽気な人たちの波の中に入って行くことは出来ず、ただ遠巻きに見ているだけで今までに一度もまともに喋ったことがなかった。
華やかな印象の高城くんの周りには可愛い女の子が常にまとわりついていたから尚更私にとっては近寄り難い人だった。
そんな彼が突然声を掛けて来たから私の胸はドキドキ進行中だった。
「それ、なに作ってるん」
「あ、あの……チャーハン、を」
「ゲッ! チャーハンかいな。なんでチャーハンに餡子投入してるんや」
「えっ? ……か、隠し味的な?」
「か──っ、見てられへん! ちょ、えぇか」
そう言うなり高城くんはヒラリと窓を乗り越えて室内に入り私の持っていたフライパンを横からかっさらった。
「えぇか? チャーハンは時間との勝負や! 油を引いた瞬間から勝負は始まっとんねん」
「は、はぁ……」
呆然とする私にレクチャーしながら高城くんはてきぱきと慣れた手つきであっという間にチャーハンを作り上げてしまった。
「ほれ、一丁上がりぃ~」
「わぁあ、すごい! 美味しそう」
「美味しそうじゃないわ、ボケェ。実際美味いんじゃ」
「た、食べてみてもいいかな?」
「どうぞ召し上がれ」
おずおずとスプーンでチャーハンをすくって口に運ぶ。
「! 美味しい!」
「そやろー。俺の作るチャーハンは絶品やで」
思わず何度も高城くんの作ったチャーハンを口にした。
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