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それからというもの本当に高城くんはバイトのない日は私の特訓に付き合ってくれた。
高城くんの料理の腕は主婦顔負けのプロ並みだった。
「あの……高城くんはなんでそんなに料理が得意なの?」
ある日、気になっていたことを不意に訊いてしまった。一瞬高城くんは表情を硬くしたけれど、すぐにいつもの柔らかいものになって教えてくれた。
「俺が5歳の時に親父が病死してな。以来おかんが女手一つで俺を育てて来てん。仕事で忙しいおかんの代わりに出来る家事は俺がしとってなぁ。小学生ん時から料理作ってたら自然と上手くもなるわ」
「……そうだったんだ」
なんだか悪いことを訊いてしまった気がしてどんな顔をすればいいのか分からなくなった。
そんな私に気が付いた高城くんは私の頭をポンッと軽く叩いた。
「!」
「あんたがそない顔することないで。今はおかん、えぇ人と再婚してな。それでこっちに越して来たんやけど、えぇ旦那のおかげで働かなくてもよくなったおかんは毎日愉しそうに家の事してすっかり俺は用済みや」
「用済みって」
「あぁ、悪い意味やないで。そのおかげで俺は好きなこと出来てるさかい。バイトにしろ放課後にクラスメイトの料理特訓に付きおうたりな」
「……高城くん」
(私に料理を教えるの……好きなことのひとつになっているの?)
何気なく言い放たれた言葉が胸に引っかかってカァッと熱くなった。
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