クッキングアシスト

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高城くんの特訓は中々厳しいものだったけれど私はその厳しさが高城くんの真面目な性格を物語っているように感じられた。 一緒にいる時間が多くなればなるほどに、高城くんのことを知れば知るほどに徐々に降り積もって来る気持ちがあった。 「熱っ!」 「ボケ! 沸騰している蒸気の上に手をかざしたら火傷するやろが!」 時には怒号が飛んだり 「なんやーなんでこんな量の塩入れたりするんやぁー」 「す、すみません~~」 時には呆れられたり 「おぉ! これはイケるで。俺のより数倍美味い!」 「本当ですか!」 時には褒めてくれることもあったりした。 「はぁぁ……。なーんか俺、ここ最近肥えたよぉな気がする」 「え……そ、そんなことないですよ?!」 「ほぉかぁ? 誰かさんの作る料理のせいでいよいよ豚になる気がしてくんで」 「酷いっ! 別に無理して食べなくてもいいって言ってるのに」 「阿呆。作ったもんは全部ありがたく頂戴する! それが情けというもんや」 「情け……なんだ」 「あ──……いや、ちゃう。俺が食べたいんや、あんたの料理」 「……え」 高城くんの言葉にドキッとした。 (それって……) 思わず甘い展開を期待したのだけれど 「段々癖になって来てん。次にあんたがどんな料理を作るのか面白ぉてな。何回かに一回は美味い時があるからまぁ、一種のギャンブルや」 「……」 (くっ…! 所詮そうよね、ギャンブルよね!) 高城くんのあっけらかんとした言葉に秘かにがっくりと肩を落とした。
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