クッキングアシスト

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文化祭を二日後に控えた頃にはもうすっかり高城くんのことが好きになっていた私。いや、むしろ好きにならない要素が無さ過ぎだ。 出来るだけ平常心を保って高城くんとの時間を愉しんで来たけれど、それももうあとわずかだった。 (はぁ……もう終わり……か) 「いよいよやな」 「……」 「大丈夫や。栗原はようやった! この俺が教えたんや、当り前やで。あんたはこのチャーハンをいつも通りに作ったらえぇ」 「……うん」 「自信持ちや。俺が太鼓判押したるさかい」 そういって高城くんは軽く握った掌を私の額にポンッと押し当てた。文字通り判子を押すような感じで。 「太鼓判って……そういう意味じゃないと思うけど」 「えぇんや。俺がしたいからしたんや」 「……そっか」 ──結局私は最後の最後まで高城くんにはお礼の言葉しかいうことが出来なかった そしてあっという間に文化祭当日になり、高城くんの宣伝効果もあったおかげであれよあれよという間に私のブースはお客さんでいっぱいになり、用意していた200食のチャーハンは大好評のうちに無事完売した。 しかし肝心の料理部への入部希望者は4人しか得ることが出来なかった。 「はぁ……ダメだったか」 ブースの片隅で小さく呟くと「見事達成したやん」という声が聞こえた。 「……え」 近くにいた高城くんから発せられた言葉に一瞬呆けた。 「部員、俺を入れたら丁度5人になるやん」 「! 高城くん、入部してくれるの?!」 「なんやぁ~俺は最初っからそのつもりで協力しとったけんどな」 「……」 「そもそもあんたよりも俺の方が部設立貢献度は上やろ」 「……うん……うん…。そうだね」 「ちょ、冗談やで? 一番頑張っとったんはあんたや! ──ちゅうことで、これからもよろしくな部長さん」 「っ!」 思わぬ結果になったことに心底心が震えた。
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