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どさりとソファに体を沈め、椎野は深く息を吐いた。さすがの椎野も、どうしたものかと思案しているようである。
「……尾田の気を引いておくか」
ややあって、ぽつりと志馬が呟いた。
「はあ? どうやって」
「俺が尾田にくっついてりゃ、尾田もいくらか動きにくいだろ」
「あーそりゃすごい名案だな。で、テメエが真っ先に殺られるって訳か」
「あんなひょろひょろ野郎に負ける気はしねえ」
「さて、冗談はここまでだ」
本気なんだが、と志馬がむすっとした。
「問題は実行犯の存在だ。尾田の協力者がいるのかどうか」
「外を見てくるか」
「玄関から堂々と入ってくるとは思えねえからな。ダイニングの勝手口を張ってりゃいい。まあ、既に紛れ込んでる可能性もあるが──」
「えっ」
志馬がぎくりとして目をまるくしたその時、突如として部屋の照明が消えた。
***
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