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小さい頃からうまく友達付き合いというものができず、それは小学校に上がってからも変わらなかった。否、更に孤独感は増した。
孤独感という言葉は、当時は理解できなかったものだ。ただ、学校ではひどく居心地が悪く、腹が痛い、気持ちが悪い等と嘘をついては毎日のように早退していた。
そんなクラスメイトを心配するお人好しがいた。マサミチという名のその少年は、家も近く、宿題やプリントをいつも甲斐甲斐しく持ってきてくれた。
ある日、いつものように学校を早退し、家でゴロゴロしていると、マサミチがひどく上気した顔で訪ねてきた。
───あのね、ウチでね、犬を飼ったんだ。見においでよ!
もともと犬は好きで、犬を飼うのは自分の夢でもあった。マサミチに手を引かれ、3分と離れていない彼の家まで走っていった。
芝生の敷き詰められた庭の片隅に真新しい犬小屋があり、そこから茶色くてふわふわした仔犬がちょこんと顔を出した。真っ黒の、まんまるの目が、不思議そうに自分を見ている。
───かわいいでしょ。マロンって名前なんだ。
マロンは興味深そうに鼻をつけてにおいを嗅ぎまくり、そしてぺろりと手を舐めた。小さな頭を撫でると、ほんわかとあたたかな体温を感じた。
かわいい、と思った。
だが同時に、言い知れぬどす黒い感情が胸の奥底で渦巻くのも感じていた。
自分はあれほど犬を飼いたいと願っているのに、飼ってもらえない。なのにマサミチは、あっさりと夢を叶えた。
悔しい。
悔しい。
憎い。
憎い。
憎い。
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