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1.
『どストライク』
かつて・・・これほど、この言葉がピッタリな瞬間があっただろうか?
楠木璃子は、目の前にいる端正な顔立ちの男を見つめながら、今までの人生を瞬時に振り返った。
「・・・璃子先生?」
「・・・・」
あれは、先週の事・・・
私は、担当編集者の新田さんから突然の告白を受けた。
「璃子先生。突然で申し訳ないのですが、この度、先生の担当を外れる事になりまして・・・」
「え?いつ?」
「それが・・・急なのですが、来週からでして。今度、ウチからデビューする新人作家がいるのですが、この人がなかなかの荒くれ者と申しますか、常識知らずと申しますか・・・そんなわけで、先生の作品をヒットさせた私なら何とか出来るんじゃないか?と上が申すものですから・・・」
「あのさ・・・その荒くれ者と私の作品が、どう関係するわけ?」
「いえ、先生の作品じゃなくて、先生そのものかと・・・?」
「はあ?!」
正直・・・これでもう、あやかしモノなど書けなくなってしまうと思った。
なぜなら・・・
私が創造したあやかし達はすべて・・・新田さんのご家族がモデルだったのだから。
ふーむ・・・これから、どうするべえか?
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