希望

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希望

目を覚ますと、車内は濡れていた。 車内だけでなく僕自身も。 周囲には氷が溶けたように水溜りが出来ている。 肩も痛いし腰も痛いし、何より立とうとすれば骨と筋肉が軋むので随分と長く眠ってしまっていたような気がする。 もしくはまだ夢の中なのか。死んでしまった後なのか。 痛みがリアルなので夢ではないとは思うが。 そういえば、トウマも、リカも、シオリもいない。 僕は這いつくばりながら開いている列車の扉から外に出た。 「やっと起きたか、ヒロム。」 目が焼けるほどの眩しい光の先、手で影を作りながら目を細めるとトウマが立っていた。 「トウマ?」 「リカもシオリもいるぜ。」 「みんな無事だったんだね。」 「まあ、'俺らは'無事って言った方が正しいのかな。」 ようやく目が光に慣れ始めて、周囲が見渡せるようになった。 そこには広大な土地が広がっており見渡す限り何もなかった。 僕達のいる駅以外の建物は崩れたようで、木材ばかりが散らばっている。 天国か、地獄か…。 「どこ、ここ。」 僕がそういうと、トウマが手に持っていた何かを差し出した。 看板のようだ。 裏返して、文字を確認する。 '最後の希望' 「もしかしてここって…。」 「帰る列車はどうやらもうないらしい。」 僕達は随分と長い間眠ってしまい、 思っていたよりもずっと遠くへ来てしまったようだ。
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