いい加減済ませと言いたい2人

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いい加減済ませと言いたい2人

 「俊ー。」  「おー、お疲れ。」  「お疲れ~。渡してくれた?」  すっかり日の落ちた頃、友達を送り終えた 瑞季と俊也が落ち合う。  付き合っている期間の長さこそ西浦と熊崎 に劣るが、何も示し合わさなくても集合でき るくらいには仲の良い2人である。ごく自然 に絡めた指で熱を共有し、近くの公園で一息 つく。  「渡して良かったのか、あのチケット。 瑞季行きたがってたじゃん。」  「いーのいーの。どうせ貰いもんだし、 俊人混み苦手でしょ?寧ろ体よく押し付け られてラッキーなくらい。」  きゃらきゃら笑う瑞季に、思わず苦笑いを 返す。はっきり言ったわけではないが、確か に俊也は人混みが苦手だ。  「嫌そうな顔してた?」  「んーん?何となく。」  人混みなんて気にしないっぽい顔してる のにね、なんて言うときっと拗ねるだろう から言わないけど。  「あの2人、さっさと済ませちゃえばいい のにね。そしたらこっちも気兼ねなく色々 誘えるのに。」  「色々?」  「だって、ダブルデートしたときにあっち がキス出来ないカップルだったら、こっちも 遠慮しなきゃでしょ?」  思わず噎せそうになって口を塞ぐ。大胆な ところがある瑞季だが、ここまで直球なのは 初めてだ。  だけど、と気を取り直し、手を握る力を 強める。  「でもそれはもうちょい先でも良いよ。」  「えー?」  笑いながらこちらを向いた瑞季に、掠める ようなキスをする。人気が全くないことは ないが、まぁ気にしない。  「…前もって言ってくれたら嬉しいな。」  「それはそれでどうかと。とにかくさ、 俺はもうちょい瑞季と2人でデートとかして たいなって思う。」  ので、キスしました。とのたまう彼氏に 思わず吹き出し、その首に手を回す。  「そだね。うまくいっても、もうちょい 2人っきりでいますか。」  「ん。」  「…ところで。前もって言うけど、私もう 一回キスしたいな。」  「俺も。」  クスクス笑いつつ、今度はしっかりと 唇を触れあわせた。
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