遊園地に行きましょう

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 「熊ー飯食おー。」  一人で弁当を広げていると、同じく弁当を 持った俊が来て向かい側に座る。そして 広げられている俺の弁当から、当然のように いくつかおかずを取り去っていった。  今回は唐揚げと卵焼き、アスパラの肉巻き がお気に召したようだ。  「今更だけど毎回おかずとるな。白米の 量と合わなくなるだろうが。」  「とかいって俺の分まで作ってくれる熊 優し。しょうがないだろ、俺の母さん弁当に 冷食しかいれねぇんだから。それが嫌だって 訳じゃねぇけどたまには手作り食いたい。」  「彼女に作って貰え。」  「瑞季はダークマター製造機。」  そんな会話をしながら食事をしていると、 不意に俊が顔を上げた。  「あ、そうだ熊。遊園地のこと調べとけ。 事前情報合った方が効率よく回れるよ。」  「もう調べてる。」  ひょいっとスマホを見せると、俊が喉を つまらせて盛大に噎せる。  「げぇっほ、ごふっ!!」  「うわっ!なんだよどうした!」  幸いにも机は汚れなかったが、顔が真っ赤 になっている。思わず未開封のお茶を差し出 すと、一息で飲み干された。  「はぁ…いや、お前さ。細かすぎるわ。 何だよこのスケジュールの多さは。プラン 10まであるとか頭どうなってんだ?」  「準備は万端にしてたほうがいいだろ。 西浦が回りたそうなとこ全部調べてたらこう なったんだよほっとけ。」  気恥ずかしさに顔を背けると、俊は何か 言いたそうに口を空けたり閉めたり食い縛っ たりしたのち、ポツリと脱力したように 呟いた。  「……そんだけ好きならなんでキスすら 出来てねぇんだよほんと……。」
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