いざ決戦

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 さて、遊園地で困るものその1。開園した 直後に走り込まない限り絶対につきまとう、 果てしない待ち時間だ。  遊園地についたはいいものの、中はすでに 人でいっぱい。連休中ということもあり、 いつもより多い気もする。人気店に何度も 並んだことのある西浦でさ唖然とするレベル だから、よっぽどだ。  「やっぱり人多いね……。」  「いや、大丈夫だ。」  西浦の手を引いてゲートを潜る。向かった 先は案内所だ。  「順番に見ていって、空いてるところとか 絶対に乗りたいやつだけ乗ろう。あとは 食べ物とか土産屋とか、その辺りを巡れば いい。」  「え、それでいいの?乗れるの少なく なっちゃうよ?」  「いい。その分一緒に歩き回れるし、 全部回ろうと思ったら疲れるからな。」  その為にいくつも回る順番考えてきた 訳だし。どうしても乗りたいものがあるなら パレード前に人が引いたら行けばいい。 引かなければパレードのいい席をとる。  そんな方向で行こうと思う、と伝えると、 西浦は少し考えたあと、にっこり笑って 頷いた。  「わかった。でもそのかわり、 またここ 来ようね。全部制覇するまで来るの!」  西浦の目がめらめら燃えている。どうやら 俺の考えに賛同はするが、ここのアトラクシ ョン制覇はしたいらしい。  ……そういえば西浦はゲームとかでもフル コンプリートするまでやりこむタイプだった 気がする。ふっと笑いが漏れて、再び西浦の 手をとる。昨日自然な手の繋ぎかたをひたす ら検索したから、やり方は完璧だ。  ……心臓はいくらか爆発しそうだが。  「わかった。何回も来よう。」  「やった!」  繋がれた手と俺の顔を交互に見て、最後に 嬉しそうに笑う。かわいい。  今度こそ、ちゃんとキスができたらいい。 手を握る力を少しだけ強め、道順にそって 歩き始めた。
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