西浦→熊崎 図書室

1/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

西浦→熊崎 図書室

 デートを終え、月曜日。俺と西浦は一緒に 図書室で作業をしていた。  というのも俺と西浦は図書委員であり、 例え誰もいなくてもカウンターに立って生徒 を待たなければならないのである。  暇ではあるが、西浦と一緒にいられると 思えば然程苦ではないし、ほぼ誰も来ない 図書室は静かで居心地がいい。  「よい、しょ…っと。」  「ん、手伝うか?」  「ほんと?ありがと。」  ふと隣を見ると、分類を終えた本を西浦が 運ぼうとしているところだった。今回は 分厚い本が多いせいで、大分重くなって しまっている。  こういう時は遠慮なく頼ればいいのに、と 思いながら本を受けとる。多少ズシッとして いるが、俺にとっては苦労するレベルでは ない。  文庫本の新刊、伝記、図鑑、大学の資料 などを手前から順に本棚に納めていき、 最後に一番奥のハードカバー専用の本棚に 本を納める。  「ふぅ…。ごめんね、手伝わせて。」  「いや、やることもあんまりないし、 気にするな。」  「ありがとー…。」  腕がだるいのか、ぷらぷらと振っている。 今度からは先に気づけるようにしないとな。  なんてぼんやり思っていると、軽く袖が 引かれるような感じがして振り向く。すると 西浦がじっとこちらを見つめていた。  「…ねぇ、熊崎君。ここ、外からはあまり 見えないんだよね。」  確かに書庫の奥は誰にも見えない。という より誰も来ていない。  …もしかして、タイミング到来か。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!