ここで一旦作戦会議 熊崎

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ここで一旦作戦会議 熊崎

 「…で?結局そこで怖じ気づいてキス 出来なかったわけ?」  「怖じ気づいた訳じゃない…。」  「はぁ~~~~……。」  珍しく西浦が一緒に帰らないと言ったその 日、俺は友人である岡田 俊也を誘って ファミレスに来ていた。  俊也の前には相談料という名の料理が 数品並んでいる。俺の財布は虫の息だ。  「お前さぁ、もう二年よ?俺んとこなんて 1ヶ月でクリアしたよ?」  「うっせ、ゲームみたいに言うな。それに お前その彼女とはもう別れただろうが。」  「残念でした今の彼女の話ですー。ほら前 お前にもいったろ、菜乃夏ちゃんの友達の 瑞季って子。」  「菜乃夏呼ぶな。」  俺だって呼べてないんだぞ二年たって。 そんな気持ちを込めてハンバーグの皿に 残してあったポテトを食ってやると、俊也が 慌てたように皿をガードした。遅い。  「お前肉はいいけどポテトは食うな! 楽しみだったんだぞ!?」  「元は俺の金だろうがガタガタ言うな。」  「相談乗らねぇからな!」  追加でポテトを頼んだ。負けた気がした。 それで一応機嫌を直したらしく、背もたれに 寄りかかった俊也が口を開く。  「とりあえずさ、タイミングが掴めないっ て話だろ?そんなもん気にしなくていいと 思うけど。」  「変なタイミングでやって西浦に嫌われた らお前のせいだからな。」  「ベタ惚れかよ面倒な。それなら…。」  と、ここで俊也の携帯がなって一端会話が 途切れる。彼女からだったらしく、ふんふん と頷きながら段々顔をしかめる。  「あ~…マジお人好しかよ。おい熊。」  「ん?」  「瑞季から。せっかく譲るんだから絶対 成功させろよ。」  しかめっ面のまま机の上に出されたのは、 隣町にある遊園地のペアチケット。どうやら 福引きで当てたらしいが、これがなんだ。  「…なんで遊園地。定番だけど。」  「定番だからだろうが。タイミングなんて 掃いて捨てるほどあるし、行ってこい。てか これで成功しなかったらもうどうしようも ないからそのつもりでな。」  どんなリスクだ。だがまぁ確かに遊園地 ならカップルも多いし、タイミングは掴み やすいだろう。ようやくそのチケットに手を 伸ばし、頭を下げつつ受けとる。  「ありがとな。行ってくるわ。」  「おー、成功したら話聞かせろよー。」  よし、やってみるか。
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