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「もう、いくの?」
「ああ。楽しかったよ。お前との日々は。本当にさ」
「……ぼくも、だよ」
少年たちは少しだけ悲しげに笑う。別れの時は、すぐそこまで迫っているのだ。
黒髪の少年はほのかに笑って、今にも表情をひしゃげてしまいそうな少年に、言い聞かせるような声を紡ぐ。
「あんまり、泣いてばかりいるなよ」
「うん……」
「泣いたら、心配になるから」
「うん……っ」
「ほら、また泣く」
ぽん、と頭を撫でようとした手はすり抜けてしまった。
少年の身体はだんだんと透明さを増していって、質量を失っていく。
現世に迷いこんだ彼は、本来あるべき死者の国へ還ろうとしているのだ。
大切な、友をおいて。
遠い、遠い場所へ。
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