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「俺、待ってるから。生まれ変わって、ちゃんとここに来いよ」
「うん……!ぼくのこと、忘れないでね」
「忘れるもんか。お前こそ、約束憶えていてくれよ……」
「もちろん、だよ……!」
短くて、濃くて、大切な夏の記憶。
輪廻の輪を越えても、この思い出が残っているかなんて誰にもわからない。
けれど、少年たちは確かに約束したのだ。
「ありがとう。さよ……なら……」
優しい少年霊は輪郭をぼやけさせ、空気にとけていく。
声も、涙も。
彼の心のように柔らかな光を放って消えていった。
その残滓を掴むように伸ばされた手は、なんの感触も得られなくて。
「またね、だろ」
無理矢理笑みをつくった黒髪の少年は、何もない空間にむけてそう呟いた。
柔らかな頬に、煌めく雫をつたわせて。
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