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「こんばんは。隣いいですか?」
ニコニコと人当たりが良さそうな眼鏡の男が声をかけてきた。
「あ、はい……」
少し腰を浮かして、横にずれる。
「それ何飲んでるの?」
「トマトジュースです」
「トマトジュース? 珍しいね」
と眼鏡の男は笑った。
「こういうとこ初めてなんですか?」
「そ、そうなんです。ちょっと緊張しちゃって……(嘘だけど)」
「そうなんだ。良かった僕も初めてで……よろしくね」
その眼鏡の男は「ハァ」と小さく息をついて、ビールをゴクゴクと勢いよく飲んで「ゲフッ」と手を添えるでも、横を向くでもなくげっぷをした。
んん? 緊張してて勢いよく飲んだから、出ちゃったのかな?
イヤ、違うぞ、こいつ……今、口に放り込んだフライドポテト。クチャラ クチャラと咀嚼音が凄い……。
こういう一見人当たりが良いのに、音を立てて食べたりげっぷを平気でしたりする人は、自分が見えてないのに、人からは良く思われたい。この手のタイプは極端な人だとモラハラとかしちゃうの。そう長年食べる姿を観察してきた、私の勘が言っているわ!
早々にこの人からは離れよう……。
「ちょっとすみません。お手洗いに……」
「あぁ……」
引き止めたそうな声を置き去りにして、そそくさとその場を離れた。
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