カモミール咲く窓辺には

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「で、何だって?」 「うん。確かにティラミスは食べたけど、特に好きで食べてたわけじゃないって。バブルの頃は女子大生って言うと周りの大人たちが勝手に寄ってきて食事に連れてってくれたんだって。勿論帰りのタクシー代出してくれて」 「で、結局何を食べてたの?」 「その日に誘ってくれたオジさんオススメの店に行ったからこれって言う物は無い、だって」 「え〜〜」  高級料理なら何でも頂くって事なのだろうか。ああ、なんて素敵な時代だったのだろう。 「まあ食事は美味しければ何でも良かったってさ。で、問題はその後さ」 「後?」 「その後何処へ行くか、だ」 「何処って、ホテル?」 「いやいやいや、それは無い。お袋がそんな、ご馳走になっただけでホテルなんて、あり得ない。そんな女じゃ無い」  夫がマザコンだと判明した。男が食事に誘うと言う事はそういう事も少なからず期待しているのでは無いのだろうか。お前だってそうだっただろうと言いたい。 「食事の後何処へ連れてってくれるかが大事だったそうだ。焼き鳥屋や居酒屋なんかに誘われたら即帰るんだって。で、ディスコやクラブだったら取り敢えず行って、出されたお酒が安物だったら飲むだけ飲んで帰る」 「じゃあ高いお酒だったりVIPルームだったら?」 「それは……え? えっと朝まで飲んだり踊ったりするんじゃ無いのか?」 「ふーん」  義母の話は役に立ちそうに無かった。  今度はいつ来てくれるのかな。何を用意しておこうかな。そんな事を考えながら眠りに就いた。
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