カモミール咲く窓辺には

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 それから何度かオバさんは現れたが、用意した物には見向きもせず、ただカモミールの香りを楽しんでいた。もしかしたらオバさんはディスコやクラブへは行かない系の、真面目な女子大生かOLだったのかもしれない。だとしたら今まで自分がしてきた事は見当違いだ。    オバさんはどんな女性だったのだろう。花が好きなのでおしとやかで物静かな女性だったのかもしれない。じゃあお茶やお花を嗜んでいた可能性もある。  お茶と言えば抹茶入緑茶があった事を思い出しキッチンへ向かった。お湯を沸かし、少し冷ましてから急須にお湯を注いだ。が、小さい湯飲み茶碗なんて無い。仕方がないのでコーヒーピッチャーにお茶を淹れた。ちゃんと1回淹れてピッチャーを温め、それを戻してもう1度淹れた。 (冷めないうちに来てくれるかな?)  期待を込めて鉢植えの側にお茶を置いた。するとガサゴソとハーブの葉っぱが動き出したかと思うと、隙間から赤い服が見えた。 (来てくれたんだ!)  今日のおもてなしは気に入ってもらえるだろうか。期待と不安の入り混じった心持ちでそっと見詰めていた。が、やはりオバさんはカモミールの花に寄り添い、香りを堪能していた。  窓から射し込む温かい陽射しを浴びて気持ち良さそうにしていた。縁側で日向ぼっこをしているおばあちゃんみたいだ。その幸せそうで優しい笑顔を見ているだけでとても癒やされる。私も年を取ったらあんなオバさんになりたいと思う。  オバさんに見とれていて時間を忘れていた。娘をお迎えに行く時間だった。慌てて、でもオバさんを驚かせないように静かに支度をして保育園へと向かった。
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