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「オバさん来てるよ!」
「ホント?」
いつもなら迎えに行っても友達や先生とまだ遊び足りないからと中々帰りたがらない娘だが、「オバさんいるよ」と言うと速攻で帰り支度をする。
早く帰らなきゃいなくなってしまうかもしれない。会いたくて会いたくてたまらないオバさん。
「お友達とかにオバさんの事話した?」
「ううん。きっとみんな信じてくれないと思う。頭が変だと思われたらヤダもん」
しっかり者の娘に少々驚くが、全くその通りである。オバさんの事は家族だけの秘密。もし誰かに話したらもう来てくれなくなってしまいそうで、私も誰にも話してはいない。
「オバさんまだいるかな?」
「そーっとよ、そーっと」
「うん!」
家に入りそうっとリビングの扉を開けた。娘の嬉しそうな笑顔が弾けた。まだオバさんはいてくれた。
椅子に座りテーブル越しにオバさんを眺める。キラキラと輝く瞳で見つめる娘を見ているとこちらまで少女になったようだ。
冷やしておいた麦茶を娘の前に置くが娘にはコップなど見えていない。ひたすらオバさんを見てニコニコしていた。
「オバさん、寝ちゃったよ」
見るとオバさんは枝に寄りかかり、気持ち良さそうに目を閉じていた。今なら捕まえられるかもしれない。
そうっと、そうっとオバさんに近付いて行った。もう少しでオバさんに手が届く……。
そうっと、そうっと……。
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