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「ーーどうやったら一瞬で遠くへ行けるかって?なんとも漠然とした質問だな」
ドリム大学の教授に尋ねるのはネーム2080。
「スター50886493478に到着するのはまだまだ先の話ですよね?
確かにコード017の速さは凄まじい。しかし、それでも私が生きている間にその地を踏むなど到底できません。もし人類が到着するまで生存する能力があったとしても、船がそれまでもつかもわかりません」
「ふむ・・。宇宙ステーションを段階的に繋ぐことでスター50886493478を目指そうという計画であったらしいが、最後の宇宙ステーションを起ってから1000年近く経つ。まだまだ遠く離れた幻の星だ」
「万が一私達の子孫がその場所にたどり着けたとしても、星自体が寿命を迎えているかもしれません」
「寿命の心配は大丈夫だろうが、他の星の衝突により無くなってしまうかもしれんな」
「だからこそ、まずは私達がその実用的な理論を見つけなければ」
「あるとすればホール移動論か・・」
「・・ということは、今回の船震もホール移動によって生じたということですか?」
「おそらく・・。そうでなければ事前に他の星の衝撃波であれば回避できていただろうからな。
と言っても、真実はわからん。単なる機械の故障かもしれんし、人的ミスを隠しているだけかもしれんしな」
「現時点では、機械の故障ではないかと報道されていますが・・。
でも教授、もしホール移動だとすれば、私達の未来も明るくなるかもしれませんねっ」
ネーム2080は少し興奮ぎみに言った。
ホール移動論、通称「ホール理論」は古来から存在する空想的理論。実証も反証もされないまま1000年以上の時が経過している。もしかすればグランボでは観測、実証されているのかもしれないが、もう交信は途絶えてしまっているためわからない。
「だが、非現実的だよ」
一方、教授の反応は冷静だった。
「ホールは偶然の産物。もちろん、ホールもおおよそ一定の周期で同じ場所にできたり消えたりするのだが、私達が望むようなホールはそう簡単には見つからない。
それに例の星は強い光を発したと聞いている。おそらくホール中に発生する層膜を抜ける際に生じる熱によるものだろう」
層膜とは、宇宙の衝突面のこと。一方向に無が反転して物質を生み出すとされている。そこを越える際にどうしても断熱圧縮が起きてしまうため、熱が生まれてしまう。
「ということは、相当なスピードでホールに飲み込まれるということですね・・。飲み込んで物質をそこに留めず放出する層膜・・。でも、星は反転して無にはならなかったんですかね?」
「おそらくそれはないだろう。例の星が無からの産物となってしまう。だとすれば大量の星がそこから流れ出てきてしまうはずだ」
「つまりは、飲み込む力を押さえるエネルギーを持っていなければ、層膜を抜ける時の熱でこの船が燃え尽きてしまうということですね・・。
いずれにせよ、現時点では船のホール移動は空論でしかないということか・・」
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