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船震から数ヶ月の時が過ぎた頃。
「しかし、この件を先に決断すべきなのかもしれんな・・」
五大長会議では、継続して船震について議論が重ねられていた。一方で、新たな議題を優先すべきかということで頭を悩ませていた。
「確かに、私達は長い時を経て少しずつだが歩を進めて来ることができた・・ように思う。しかし、グランボからも遠く、最後の宇宙ステーションからも遠く、そしてそれ以上にスター50886493478からも遠いこの場所にいることは、果たして本当に私達の希望に近づいているんでしょうか?」
「船内循環機能も機械の修理を行うことで維持できてはいますが、それもいつかは無理が生じ始めるでしょう」
船長の言葉に、五大長らもそれぞれに思いや考えを述べた。
「もしかすれば、決断の時は遅かったのかもしれんな・・」
船震検証委員会の結論は、船震の原因となる星の衝撃波は不可能だった、となっていた。星の発見の遅れの原因は、断定できないがホールからの星の出現の可能性が強い、と。
「待て待て、皆の考えは数ヶ月前のあの場所に戻り、ホールを探し出し、リスクを承知で飛び込んでみるべき、だと言いたいのか?」
「防衛大長、今回の船震で我々が助かったのは何かの示唆だったのかもしれんと私は思う。そなたの船民の命を守りたい気持ちは重々理解できる。しかし、我々は同時に未来の船民のことも検討に入れた上で今のひとつひとつの問題を解決していかねばならないのだ」
「でも、失敗すれば未来どころか今を生きる我々が全てを終わらせてしまうのかもしれんのですぞっ?」
「船長、防衛大長。いずれにせよ、これ程の決断は私達五大長だけではできません。ここは全船民による直接投票で・・」
「ーー全船民に問うっ。我々の道は我々自身で決断せねばならないっ。
今を逃せばもう期は訪れないかもしれない。また、決断をしてもその期を得られるかもわからない。
だが、船民の意志を得られた時は、近くに訪れるかもしれないその瞬間の決心となるっ」
船長による演説は約2週間繰り返された。大きな決断にしては短すぎる程だったが、それほどにすぐに何かしらの答えを欲していた。
「船長、手応えはいかがでしょう?」
「わからん・・。もしかすれば有効投票数に達することなく、結果としては何も変わらないかもしれん。しかし・・」
「仰りたいことは言わずとも理解できます。今回の結果如何を問わず、船民に考える種を与えられるだけでも前進と言えるでしょう」
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