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エピローグ
「全船民に伝えるっ。ゲート4から6までのいずれかから船外へ脱出することっ。他のゲートからは絶対に出ないようっ。繰り返すっーー」
船内は警報が鳴り響くと同時に、緊急放送が流れ続けていた。
「とりあえず放送は録音に切り替え、我々もここを出るぞっ」
「くそっ、家族の無事を確認できないまま逃げなきゃならんとは・・」
五大長を含めた中枢たる者達も、他の者達を助ける余裕などなかった。船は着地点から火が上がっており、確認は取れないまでも、死傷者が出ていることは想像に易かった。
「これで、この星が人類に不適応だったならもう一貫の終わりだな・・」
「防衛大長にしては弱気な発言だな・・。
いずれにせよグランボが消滅した時点で人類は終わってたんだ。人類の希望をかけたギャンブルに勝つか負けるか。どうせ負けるなら勝てる道に賭けるしかないだろう」
「はんっ、船長がギャンブルしてしまったら道連れになるしかないなっ」
「ーーお母さんっ、俺はいいから逃げてっ」
「あなたを置いてなんか行けないっ。お父さんまで失って私は何を希望に生きたらいいのよっ」
船震で夫を失った母子であった。衝撃で瓦礫に挟まれた息子と運よく助かった母親。しかし、母親は逃げることをためらい、その場に居座っていた。
「ーーおいっ、あそこに人がいるぞっ」
「防衛大長、私が様子を見てくるっ。そなたはそのまま逃げるんだ」
「馬鹿を言うなっ。船長が助からなかったら誰が皆を引っ張るんだよっ」
「くっ・・、すまない・・」
船長達はその母子を助けることなくゲートに向かった。
コード017は最後には完全に火に飲まれてしまった。混乱で道を誤り逃げ遅れた者も多くいた。少なくとも船民の半数は希望の星の地を踏むことなく命を失った。そして、日の経過の中でコード017は風化し、新たな星の地に姿を消した。
「ーー我々は助かったっ。だが、多くの犠牲もあったっ。喜び以上の悲しみがあることは、皆だけでなく私も同じだっ。
生きようっ。そして、悲しみ以上の夢溢れる笑顔をこの新たな星にっ」
祖星グランボから遠く離れたこの星は、「ニュードリム」と名付けられた。コード017以外の宇宙船がどうなったかはわからない。グランボで生まれた人類という希望がニュードリムでどれほど生き永らえることができるかもわからない。グランボの歴史は記録としては継承されなかったかもしれないが、その歴史の結果が新たな歴史を生む架け橋となったことは間違いないだろう。
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