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Episode5 コスプレ日和
今日は待ちに待ったコスプレイベントである!
「夢鮭ー! 久し振り!」
「おー、久し振りー」
なんとなんと、今回は会場の最寄り駅で夢鮭と待ち合わせることになっていたのだ。
改札を出たところで待っていた夢鮭は、相変わらずの爽やかスマイルでオレを出迎えてくれた。
うっ、久し振りに会うリアル夢鮭の破壊力はすげぇ…!
ちなみに、オレも夢鮭もキャリーを引っ張ってサングラスをしている。
オレたちは家からカラコンをしてくる派なので、珍妙な色の瞳を隠すためにサングラスは必須なのだ。
「梨衣さんって前日入りしてるんだっけ?」
指定された更衣室に向かうべく歩き始めながら、もう一人の同行者について尋ねてみた。
「そうそう。でもどうせ更衣室は別だし、着替えてから合流しようかなーと」
夢鮭と梨衣さんは、今日は同じゲームのキャラクターのコスプレをする。梨衣さんがハマってるアイドル育成ゲームのキャラで、前にオレもすすめられた作品だ。
と言うか、とりあえず先日アプリを入れてメインストーリーを全開放してしまった。女性向けのイケメンだらけのゲームとは言いつつストーリーがしっかりしていて、梨衣さんがオレにすすめてくれた瑞希のウィッグをどうセットしようかとまで考えているところだ(要するに沼落ちした)。
「いやー、作品違うのに同行させてもらって申し訳ない…」
「なに言ってんだよ。今日はヒイラの初女装だろ? ちゃんとエスコートしてやるから、さ」
「ヒェッ…」
瞳を甘くして妙に艶っぽく呟いた夢鮭は、さりげなくオレの腰に腕を回してきた。
女装するって決めてよかったー! こんなイケメンにエスコートされるなんて最高すぎでは!?
「これでオタクじゃなければなぁ…」
「ん? なに? ブーメラン投げてどうした?」
「オレはいいんだよ、おまえみたいにイケメンってわけじゃないし!」
気取ってるわけでもないし、話しやすいし。こんな優良物件は三次元ではなかなか見ない。
いやまぁ、うちの生徒会はちょっと狂ってるから揃いも揃って整った顔立ちをしてるわけだが……。
狂ってるし、それに。
可愛い後輩だと思ってた和は俺のことを──
「ヒイラ? どうした、顔色悪いけど」
「いや、大丈夫……でもアフターで話聞いてくれ」
いまはイベントのことだけ考えよう、うん。
無理やり笑顔を貼り付けると、夢鮭は首を傾げながらも「了解」とだけ言って話を変えてくれた。
和のこともそうだし、その後に唯にも……
頭を抱えたくなったが、いったん全て忘れることにした。
***
「推しが!!いる!!!!」
これは着替え終わってから合流した梨衣さんの第一声である。
「えー! えー! 夢鮭くん、やっぱドSっぽいイケメン似合うなぁ!」
「それはどうもー。梨衣ちゃんも相変わらずイケメンだな、黙ってれば!」
「はっはー! よく言われるわ!」
同じアイドル衣装を身につけてお互いを褒め合う…。これぞコスプレイベントの醍醐味って感じだなぁ。
ちなみに、今回のイベントは都心から外れた場所にあるショッピングモール内で行われている。
貸切りにされているわけではなく一般客もいるのだが、イベント時間中はコスプレして歩けるしショッピングを楽しむことだってできる。
これが街中の一部分だったり、屋内の会場を貸切りで行われるものだったり。コスプレイベントと一口に言っても様々なタイプがあるのだ。
「ヒイラくんもめーーーっちゃ可愛い!」
久し振りのイベントの雰囲気にそわそわしていると、いつの間にか会話の中心にオレがいた。
「おっぱいってなに入れてるん? タオル?」
「ヌーブラとタオルの合わせ技っす。 マリアちゃん、結構おっぱい大きいから…」
「なるほどなー」
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