Episode6 波乱の学園祭

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*** 「つーわけで、双子の片割れは食った」 昨日の晩ご飯美味しかったなぁ、というテンションで報告されたのでうっかり聴き逃しそうになってしまった。 「食った……というのは、その」 「今日の放課後に抱かれてきた、なごみの方に」 「まじか~~!!!」 一週間後に学園祭を控えた夜、唯はいつものウィッグメンテナンスに来ていた。 今日は生徒会が休みで、オレは新しい衣装の制作に取り掛かるため帰りのHRが終わるなり寮に直行したわけだけど……。 「えー、そっか。て言うか、なんで和から?」 告白されたあの日以来、オレは和とぎくしゃくしたままでいる。和は気にしていないように装ってくれているものの……。 ちなみに、唯には和から告白されたことを伝えていない。 伝えていたら和にちょっかいをかけていないだろう、たぶん。唯なら気にしないかもしれないけど。 「一番好みから遠いから、かな」 「はぁー、なるほど。和は可愛い系だもんな」 「でも、思ってたより良かったわ。もっかいぐらい寝てもいいかも」 「へっ……へぇ……」 今日の唯はご機嫌だ。 まぁ、当然だろう。ここに転校してきてからやっと男に抱いてもらえたんだから。 しかし、オレとしては複雑だ。オレに好きだと言ってくれた和と、もしかしたらオレのことが好きなのかもしれない唯が……一線を……。 「……アリだな」 他に想い人がいる二人が、お互いを慰め合いながら致す……うん。大アリ!! いやでも、その想い人がオレっていうのは全然ナシだけど! 「なんだよ、また百面相して」 「うぇっ……や、べつに……なんでも」 ふぅん? と首を傾げる唯を見てなんとなくそわそわしてしまう。 だって、よくよく考えてみてほしい。 数時間前、唯は和に抱かれたのだ。 この幼なじみが男を恋愛対象にしていることは知っているけど、実際に付き合っている人や身体の関係を持った人なんかに会ったことがあるわけではない。 だから、理解していたつもりだけどなんとなく別世界の話だと思ってたっていうか……。いや、もしかしたらこれまでも男に抱かれた直後にオレと会ってたこともあったかもしれないけど! 「……軽蔑した?」 「え?」 唯が急に声を低くして、寂しそうに眉を寄せながら首を傾げる。 「冗談のつもりだっただろ、竜也からすれば。生徒会メンバー全員に抱かれてこいなんて」 「えっ!? いやいや、そんなことはっ…!」 「やだなって思ったんだったら素直に教えてほしい。俺は……男とそういうことするの好きだけど、おまえがいちばん大事だからさ」 頬に触れた唯の手は驚くほど冷たい。 表情も固いし、もしかしたら緊張しているのかもしれない。 「……いや、大丈夫! ネタ提供ありがとなって感じだし!」 わざと明るく振る舞うように笑うと、頬に触れていた手が離れた。 「ん、そっか。それならいいけど」 「今後も励んでくれよ~! あ、でも無理はせずにな!」 「ふはっ、了解」 ご褒美がほしい、と言ってきた唯のことをふと思い出した。 それは全員に抱かれてからの話だろうか? それとも、一人に抱かれたらその度に? 「あ……あのさー、唯」 「ん?」 「ちょっと前にさ、ご褒美ほしいって言ってたじゃん? アレって具体的な希望とかあったりするのか? タイミングとか内容とか」 オレが唯にご褒美をあげられるとは思えないんだけど、それで唯のモチベーションが上がるなら話はべつだ。 でも内容によっては心構えが必要になってくるし、事前に聞いておくべきだろう。
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