捨てたもの

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捨てたもの

「あーすーかー。着替えられた?」 「も、もうちょっと……!」 「またそれー? 着替えに何分かけてるのー?」 こんにちは、三好飛鳥です。今日は土曜日だけど、皐月さんがテスト直前のためデートは中止です。 でも今日、私はありさと映画を見に行くことになっていた。 更に更に。その前に「服を選んであげる」と、近所のショッピングセンターに連れて来られて試着室に入ってるんだけど……。 「絶対に似合ってないよ、これ……!」 ありさが選んだ服は、明かに私には不似合いなものだった。 「もー。映画始まっちゃうし、勝手に開けるよ!」 「あっ!」 鏡の前で唸っていると、ありさが強引に試着室のカーテンを開いた。 「あ、ありさ……!」 着替えは完全に終わってるから、なにも恥ずかしがる必要はないんだけど……。 僕、一応男だよ? なんでありさはなんの抵抗もなくカーテン開けられるの!? 「うんうん、いいんじゃない? なかなか似合ってる!」 私の心の叫びなんて聞こえるはずもなく、ありさは満足そうに微笑んだ。 今回の服はカジュアルに。白いシャツに黒いネクタイ、薄手のベスト。ズボンにはチェーンが付いていて、なんだかくすぐったい。 そして何故か黒いフレームの伊達眼鏡まで用意されていて、自分が自分じゃないみたいだ。 「ね、ねぇ。この眼鏡って必要なの? 外しちゃだめ?」 「だーめ! せっかくカッコいいのにー」 そう、かなぁ? 確かにオシャレな人が伊達眼鏡かけたらカッコいいけど、私には似合わないような気がするよ……。 ちなみに。男にしては長い髪は、ありさの手によってワックスで男の子っぽくセットされている。いつも自然に流しているだけだから落ち着かない。 「じゃ、そろそろ行こっか!」 「ちょっ、ちょっと待ってよー!」 ありさ、今日は朝からテンションが高いなぁ。 でも、私も楽しみだな。よくよく考えてみれな最近は皐月さんと遊んでばかりだし、ありさと二人っきりになるなんて学校以外ではなかった気がするもん。お隣さんだから気軽に会いに行けるけどさ。
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