条約の締結

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がくりと肩を落とすと、あははと軽く笑われた。このありさの性格、ときどき羨ましくなっちゃうよ。 「ほら、帰ろ?」 「……うん」 差し出された手を掴み、校門に向かって歩き出す。 ……ありさは、ずっと私と一緒にいてくれる。中学に入って何回か告白されて、しかも全部断って。いろんな噂をされてる私なのに、ずっとずっと一緒にいてくれるんだ。 「ごめんね、馬鹿って言っちゃって」 「えっ、なぁに。もう謝っちゃうの?」 「だって……」 うぅ、恥ずかしくて言葉が見つからない。 するとありさは悪戯っ子みたいに歯を見せて笑い、どんよりした雲を指差した。それにつられるように私も空を見上げる。 「明日は晴れるんだってさ! 土曜日だし、カラオケにでも行かない? 近くのゲーセンでプリも撮ってさー」 「えーっ、なにそれ。晴れるのにカラオケなの?」 ありさと手を繋いで家に帰ることも。休みの日にカラオケではしゃぐことも。 全部全部、楽しくて。それはきっと、今の「私」じゃないと経験できないことばかりなんだ。 だけど、ときどき思うんだ。もしも私が「私」じゃなかったら、この世界は全く違う動きを見せるのかな……? 「とーもーかーくっ! 明日はあたしとデートだからね! わかった?」 「はいはい、わかったってば。明日はありさとデート、ね」 確認するように復唱すると、ありさも納得してくれたみたいだった。うんうん、と頷いてから空いた左手でスマホを取り出す。 「メモっとこうっと。何時にする?」 「うーん、何時でもいいけど……」 「それじゃあ九時半に迎えに行くねー。服も選んであげるから」 「えぇーっ、いいよーべつに!」 中学に入ると学校には制服で通うようになったから、休みの日に私服で遊びに行く時はすっごく張り切るありさ。しかも自分のコーディネートじゃなくて私のを、だ。 べつにいいよって何度も言ってるのに、私を着せ替え人形にして楽しんでるみたい。 「そろそろ夏服も揃えないとねー。服も見に行こっか? コーディネートしてあげる!」 「えぇー。去年のでいいじゃん……」
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