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それだけで十分なのに、まさか皐月さんからもお祝いされるとは思わなかった。こんなに幸せで……いいのかなぁ。
「なー、飛鳥。それ、いますぐ開けてみて?」
「あ、はいっ」
隣にあぐらを掻いた皐月さんに促され、なるべく破らないように包装紙を開けていく。
なんだろう? 触った感じは柔らかいけど……。
「……あ」
丁寧にラッピングを解いて出てきたのは、包装紙と同じような色のエプロンだった。
「皐月さん、これ」
「美少女っぽいだろ? こういうの。……気に入った?」
畳まれたエプロンを広げてみると、思った通りと言うべきか……裾にはたっぷりのレースが揺れていた。
ちょ、ちょっと待って。なんでエプロン?
だって私、料理なんて全く……。
「べつに女の子だから料理できなきゃいけないってこともないけどさー。飛鳥が目指すのは完璧な美少女なんだろ?」
エプロンを見て絶句する私を見て、いまにも笑い転げそうな震える声で皐月さんが続ける。
「これ着てさ、料理上手な美少女ってのを目指すのもいいんじゃない?」
「さ、皐月さん……」
「お母さんに言ったら喜ぶと思うけどなー。料理教えてーって」
また私の声色を真似た皐月さんは、もう限界とばかりに噴き出した。
テーブルに突っ伏し、ひーひー言いながら笑っている。せっかくの美少年が台無しだ。
「ちょっと、皐月さん……!」
「わ、悪い。想像したら笑えて……っ……!」
皐月さんのツボは未だに理解できない。
「あー、笑った。それじゃあ飛鳥、そろそろ送るよ」
「え?」
テーブルから顔を上げた皐月さんは、私の手からエプロンを取り上げてまた包装紙に包んでくれた。それを受け取りながら、たったいま皐月さんが発した言葉の意味を考えてみる。
え……? 送るって、家にってこと?
「あの、もしかして今日ってこれを渡すためだけに家に呼んだんですか?」
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