捨てたもの

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「やっぱり女の子が多いね……」 パンフレットを買うために売店に行くと、中学生から高校生ぐらいの女の子がたくさんいた。目当てはほとんどイケラバらしく、イケラバのパンフレットだけが明らかに少なくなっている。 「うわ、やばっ! 飛鳥、買ってくるからここでちょっと待ってて!」 「う、うん」 売店の入り口で待つように言われ、勢いに負けて頷く。 うん、いいんだけどね。人ごみって少し苦手だし……。 「……」 ぼんやりしていると、売店の棚に立てかけてある小さな鏡に自分の姿が映り込んだ。 制服を着ている『飛鳥ちゃん』とは別人のような『僕』がいる。だけど意識は『飛鳥ちゃん』のままで、まるで鏡が壊れているようにも思えた。 「……変なの」 ──違う。僕は男だ。 いつもの『私』は偽物で、本当はこの姿の方が自然なんだ。 「飛鳥ー、お待たせ!」 「あ、うん。おかえり」 さっさとパンフレットを買ってきたありさが私のところに戻ってきた。 鏡から視線を外し、ありさの隣に並ぶ。 「じゃ、行こうか飛鳥」 「うん」 で、映画の感想。 うん。なんて言うか、イケメンさんでお腹いっぱいって感じだった。 それぞれの俳優さんのファンが来ていたらしく、お目当ての俳優さんが初登場したシーンでは黄色い声が飛んだりしていた。ありさは別に特定の俳優さんのファンわけじゃないらしく、最初から最後まで大人しく見てたけど。 「私さー、あれはどうかと思うよ。映画館なんだから大人しく見なきゃ他人に迷惑でしょうが」 いや、むしろ怒っていたらしい。 「飛鳥もそう思うでしょ?」 「んー。まぁね……」 映画が終わり、私たちは映画が始まる前にも来たショッピングセンターに来ていた。買い物がしたいそうで、今は一階の喫茶店で休憩している。
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