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駅から出た私は雑貨店を探しだした。
確かこの辺にあったような気がするんだけどなー。
しばらく歩くと、その店はあった。
古びた店内には、洗剤やらエプロンやらカップラーメンが並んでいるのが見える。
ガラガラと引き戸を開ける。
「いらっしゃいませ」
店の奥から、サンダルを履いたおばあさんが出て来てくれた。
「すいません、お花ってありますか?
お墓参りに持っていくのがなくて」
おばあさんは隅に置いてあるバケツから、葉っぱだけの枝を取ると私の方に持ってきた。
「シキミしかないけど。これでいいかい?」
シキミって?
ただの葉っぱみたいだけど。
でも何かこういうのが神棚に飾ってあるのを見た事あるような気もする。
お墓参りって伝えてるし大丈夫なのかな。
悩んでいる私をジッと見ていたおばあさんは
「花の方がいいだろうねぇ。
ちょっとついておいで」
と言うとシキミをバケツに戻し、私に手招きした。
店を出たおばあさんは、店の横に伸びる路地を歩いていく。
よく分からないけど、ついて行くしかなさそう。
おばあさんは、店の裏庭に辿り着くとプランターを指差した。
そこにはオレンジ色の花が綺麗に咲いていた。
「これはマリーゴールド。
ちょうど咲いているから、いるならあげるよ」
「えっ?でもせっかく咲いているのに。
悪いですから」
「いい、いい。ここで咲いていても、この花を見る者は私だけだから。マリーちゃんもあんたと一緒に違う世界を見たいはずだよ」
マリーちゃん。
私と一緒に違う世界を見ると言っても、行き先はお墓なんだけど。
おばあさんの優しさに甘えよう。
おばあさんは新聞紙に数本のマリーちゃんを包んでくれた。
丁寧にお礼を伝えた私はその場を後にした。
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