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「ママー、お兄ちゃんが泣いてるよ」
4歳の妹が、素振りしながら泣いている俺を心配して、母さんの所に走っていった。
帰りの電車で誰も泣かなかった。ただ唇を噛みしめ、無言で電車の音を聞いていた。一言でも何か話したら、想いが溢れそうで。上がってくる熱いものを、みんな堪えていた。
全く歯が立たなかった。どんなに足掻いても、大人と子供くらいの実力の差があって。
気持ちが切れそうになるのを、懸命にみんなで繋いだ。
悔しくて情けなくて、胸を掻き毟りたいくらいイライラしてる。それが涙に変わって、俺は今になって大泣きしながら、庭でバットを振り回していた。
出れただけでも良かった、なんて顧問は言ったけど。
誰もそんなふうには思わなかった。
俺たちは勝ちたかったんだ。
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