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グラウンドのバックネット前に整列した俺たち10人。向かい合うのは体がデカくて胸板の厚い、がっしりした人だった。
日焼けした笑顔に無精髭。7月上旬の日射しを麦わら帽子で防いでいる。
「地区予選の最初の試合を見た」
新監督が笑顔で放った最初の一言に、俺たちの気持ちがズンと重くなった。
「伸び代がありすぎて、俺はワクワクしてる」
続く言葉に、今度は全員が顔を上げた。
なんつーか、武将みたいな雰囲気の監督は、野心を丸出しにしてニヤリと笑った。
「来年は、甲子園行くぞ。お前らの『諦めない態度』見たからには、応援しない訳にはいかねえ」
そして監督は低い濁声で言った。
「今までよく頑張ってきたな! 後は大丈夫だ。俺に任せろ!」
「ーーーー……」
その言葉に、二年生は一人残らず俯いて泣いてしまった。
ほっとした時にも、涙って出るんだ。
それが熱くてびっくりした。
竹村が大声で泣く声につられて、食いしばった歯の間から嗚咽がもれた。
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