小学6年生の負債

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「沖崎小学校6年3組、柏田遥(かしわだはるか)です。ガラス割ってすみませんでした」 クラブの監督に連れられて向かった屋敷。瓦葺きの門を開けて、日本庭園みたいな庭を通り、顔を真っ青にしたガクブルの監督と一緒にインターホンを押した。 出てきたのは着物のオバちゃん。 「お上がりなさい」 細い目は明らかに怒りを宿していた。俺と監督は顔を見合わせた。 なんか、やばい。 それだけは、子供の俺にも分かった。 言われるがまま、俺の部屋くらいある広い玄関を上がり、ピカピカの廊下をオバちゃんに付いて歩く。 庭に面した方は全部ガラス張りで、カラスが呑気に歩いてるのが見えた。 そこから10歩。 俺と監督は顎が外れるかと思うほど口を「ガチョン」と開けた。「冷や汗」というのを体感したのは、この時が初めてだったかもしれない。 指紋ひとつない大きな窓ガラスを突き破った打球は、その先にある大きな壺をもぶち壊していた。
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