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「梅座右衛門の壺です」
「梅座右衛門!?」
悲鳴のような声。見上げると、白目を剥いた監督が口の端から泡を吹いていた。ただならぬ緊張感に、俺は言葉も出ない。多分、有名な人なんだろう。
後で調べたら、なんだか江戸時代の有名な窯元で、今もそれが続いてて、天皇の家でもその窯元の食器が使われてるとか、なんとかかんとか……。
とにかくピンチだ。
オバちゃんは「三億円の家宝です」と低い声で言った。
さんおくえん。
俺のお小遣いが月に500円だから、割ると6の後にゼロが……
60万ヶ月!!
それを12ヶ月で割ったら……
恐る恐る指折り数える俺。数え終わって、カラカラになった口で、思いっきり息を飲み込んだ。
五万年。
俺、死んでも返せねえ。
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