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「どうしよっか」
被害総額が一番高かった、大人しい菅野が呟いた。
俺たち8人はがらんとした、暗くて臭い部室で呆けていた。
自由になったのはいいけど、いるのは8人。おまけに表向きでは、野球部に活動禁止令が出されていた。
「……やることなんて、ひとつしかねーじゃん」
呟いたのは一番サンドバックにされた西木。体が大きい分、そういう苦労をしてきた。
俺たちはハッとして、互いを見合わせた。
やることは、ひとつ。
胸の奥から熱いものが吹き上げてくるのを感じて、拳をギュッと握りしめた。
「野球やろうぜ!」
元気がいい竹村。こいつの明るさに何度も引き上げられてきた。
「野球やるか!」
「野球ができる!」
野球! 野球! 野球!
小さかった灯火はすぐにキャンプファイヤーみたいな大きな炎になって盛り上がった。
「ホームラン、打つぞ!」
俺が吠えると、千葉っちが「気が早ぇよ」と笑った。
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