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カケル君はとろとろ自転車に跨りながら、瑞希と瑠美ちゃんは歩いてキョウゴ君の家に向かっている。
正直、瑞希はあまり乗り気ではなかったけれど、祖母があまりにも嬉しそうだったし、二人がわざわざ遠い私の家まで来てしまったから断りにくいというのもあって、遊びの誘いについていくことにした。
「ところで、二人はなんで私の家を知ってたの?」
五分程歩いたところで、ずっと疑問に思っていたことをやっと口にする。家の住所なんて、誰にも教えていないはずだった。
「あー、キョウゴから聞いた」
事もなげにカケル君が言ったけれど、瑞希はますます意味不明だ。
瑞希の戸惑いが伝わったのか、カケル君がさらに言葉を続けた。
「キョウゴん家、酪農やってんの。そんで、キョウゴの奴は毎週瑞希のばあちゃんとこに牛乳届けてる」
初耳だった。二人にそんな繋がりがあったなんて、全然知らなかった。
「もうすぐ孫がくるんだー、瑞希って言ってねー、でも中途半端な時期の転校だから友達できるかしらーどうしようーって、笑顔になったり、青ざめたりして、キョウゴを捕まえては延々と話してたらしいぜ」
「そう、なんだ……」
おばあちゃんが突然同居することになった瑞希のことを、そんなふうに考えてくれていたなんて。胸がじんわりと鈍い痛みを伴いながらも、ほのかにあたたかくなる。
「だからさ、担任からうちのクラスに転校生がくるって聞いた時には、お、噂の瑞希じゃんって」
な! とカケル君が隣を歩く瑠美ちゃんを振り向くと、瑠美ちゃんも「うん」とはにかむように微笑んだ。
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