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「位置について、よーい――」  青空を突き抜けるように鳴ったホイッスルを合図に、何人かが一斉に水中に飛び込む音が一直線にここまで届く。  夏休みが空けて一週間が経った九月十日。四時限目の体育の時間。  福島瑞希(ふくしまみずき)は、この学校で行われる今年最後のプールの授業を欠席し、一人保健室のベッドに腰掛け養護の先生と向き合っていた。 「それじゃ、この時間は私もずっとここにいるから。何かあったらすぐに呼んでね」  若い女性の先生は優しげに目を細めると、回転式の丸椅子から立ち上がり、さっと素早くカーテンを閉めた。  その弾みでより一層強く臭った石鹸の香りは、開けられた窓から入り込む風が一瞬にして元の場所へと押し戻す。  間仕切られた個室のすぐ隣からは、すぐさまパソコンのキーボードを叩くリズミカルな音が聞こえ始めた。
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