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「なぁ、瑞希って体弱いの?」  六人一組の班ごとで机を寄せ合って食べる昼食の時間。寄せた机の真正面に座るカケル君が話しかけてきた。  カケル君は一週間前、皆でいうと夏休み明けの登校日であり、瑞希にとってはこの学校に転校してきた日から、遠慮や気遣いといったものが一切なく、いきなり呼び捨てで瑞希に接してきている。 「ううん。別に弱くないけど、どうして?」 「プールん時、いなかったから」  どうやら自分のお弁当は早々に食べ終わったようで、カケル君は机の上に投げ出すように伸ばした右腕に顎を乗せ、なぜか恨めしそうにこちらを見ている。  瑞希よりずっと長いその腕が、瑞希の机半分にまでかかっていることには、気にもしていないのだろう。  ちょっと体調が悪くて、と言おうとして、瑞希は今まさに自分の口がもぐもぐと動いていることに気付き、咄嗟に言葉を変えた。 「水着持ってないの。前の学校ではプール自体がなかったから」  我ながらスムーズな受け答えができたんじゃないかな? とにっこり満足する。水着を持っていないのは本当だった。前の学校に、プールはあったけれど。 「でもさ、なんで保健室? 他の女子は見学でもプールサイドにいたけど」  あ、そっちね。至極真っ当な質問ではあるけれど、不遠慮な上にずかずか痛いところをついてくるんだよなぁ、この人。  と、瑞希が心の中でだけ苦笑していた、その時だった。 「カケルは瑞希ちゃんに見てほしかったんだよねー」  カケル君の隣、瑞希の斜め前に座る女の子が、からかうような口調で笑顔を見せた。
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