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君がこの手紙を読む頃、僕はもう世界にはいないだろう。僕は今から、これほど恐れている孤独の中に自ら飛び込み、君に触れることができなくなる。
だけど唯一の救いは、取り残された君が孤独ではない事だ。君のおなかには僕との子供が宿っており、もうじき産声を上げる。
お産のことは分からないが、僕は自分の中に残る、僅かな力をありったけ振り絞って、死にゆく惑星からのメッセージを読み解き、今地上で最も安全で、最も気候が安定しているこの場所まで君を連れて来たんだ。
だから君は、恐ろしい地震や津波や崖崩れ、大嵐や干ばつに怯えることなく、この地で安心して子供を産み育てることができる。
これは、僕から君に送る、最後の贈り物になるだろう。
君は悲しむと思う。だけど君は断じて孤独ではない。生まれてくる子供が君に寄り添うだろう。君はその子供に僕の面影を見るだろう。
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