僕は惑星に還る

4/8
前へ
/8ページ
次へ
 君がこの手紙を読む頃、僕はもう世界にはいないだろう。僕は今から、これほど恐れている孤独の中に自ら飛び込み、君に触れることができなくなる。  だけど唯一の救いは、取り残された君が孤独ではない事だ。君のおなかには僕との子供が宿っており、もうじき産声を上げる。  お産のことは分からないが、僕は自分の中に残る、僅かな力をありったけ振り絞って、死にゆく惑星からのメッセージを読み解き、今地上で最も安全で、最も気候が安定しているこの場所まで君を連れて来たんだ。  だから君は、恐ろしい地震や津波や崖崩れ、大嵐や干ばつに怯えることなく、この地で安心して子供を産み育てることができる。  これは、僕から君に送る、最後の贈り物になるだろう。  君は悲しむと思う。だけど君は断じて孤独ではない。生まれてくる子供が君に寄り添うだろう。君はその子供に僕の面影を見るだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加