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人々が、僕を放っておいてくれなかったのは、世界で立て続けに大きな災害が起きるようになったから。僕はもう、なんの役にも立たない男でしかないのに。
明日をも知れぬ日々、みんなは僕の能力さえあればと願ったんだ。あの、完璧に当てる予報さえあれば命は救われる、誰もが恐ろしい思いをしないまま、安泰に暮らすことができる。
だから世界中から僕らは追われるようになった。僕と君を割いて、僕をまた、惑星のしもべにしようと人々は企んだ。
本当に恐ろしい逃亡だったね。だけど君はよくついてきてくれたと思う。手に手を取って、僕らは逃げた。砂漠の中を、あれる海の上を、人食いの動物が住む山の中を。
逃げて逃げて、そうしているうちに、僕は密かに昔の才能を思い出していた。失われてしまった力はもう戻らないけれど、気候を読むこつのようなものは、感覚が覚えていた。
その感覚が僅かな力となって、僕の中に残っていたんだ。
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