72人が本棚に入れています
本棚に追加
ねえ君、昨日の夕焼けを覚えているかい。
ピンクとオレンジとパープルのグラデーションが、この世のものとも思えなかっただろう。
やがて群青色の夜がやってきて、季節外れの流星群が一晩流れ続けただろう。
君は無邪気に喜んだけれど、僕は知っていたんだ。
これは惑星からのメッセージ。
僕らのいる、あたたかで安全な洞窟は崖の上にあるだろう。この崖の下が惑星のへそになっている。へその中には煮え立ったマグマが動き続けているんだ。
そう書くと恐ろしいと思うかもしれないが、惑星のへそほど安全な場所はないんだ。だからこそ、僕はこの場所を選んだんだよ。
だけど、昨日の夕焼けは、惑星の中の赤く熱い血潮が破裂して、この世が裂けることを予言していたんだ。
惑星はもう、命を終えようと思っている。
そうなんだ、つまり、もうこの星はなくなってしまおうとしているんだよ。
だけど、僕はどうしても、君には生きていてもらいたいと思った。君と、子供は生きながらえてもらいたい。そして、笑っていてほしい。僕が愛した、空の下、大地の上で、泣いたり喜んだりしながら生きて、無事に一生を終えて欲しい。
惑星には、あとほんの数十年、待ってもらわなくてはならない。
命は一種のエネルギーだから、僕の残りの命を差し出せば、惑星はもうあと僅かに存続するだろう。
こんなちっぽけな僕だけど、巨大な惑星の命と差はないんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!