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「あっ、口座も俺のでいいよな?」
「うん!」
ヨネは屈託のない笑顔で頷いたあと、「それよりさ」と話を切り替える。
「お兄ちゃん、今日はありがとう」
「――ん?」
「あのままだとイナはずっとお腹ペコぺコで過ごさないといけなかったから、本当に本当にありがとう」
俺は大袈裟だと思ったけれど、そのことは何も言わずに素直に言葉を受け取った。
俺は友人である大神の部屋に転がり込んでいる。彼が動画編集の機材を持っているので貸してもらっている。
大神は妙に金羽振りが良い。色んな物を何でも持っていて、小綺麗なマンションに住んでいる。多分、親が金持ちなんだろう。
それを何でも無償で貸してくれるから良い奴だと俺は思う。
実質初めての動画編集に四苦八苦していると、大神がPCを覗き込んできた。
「うわっ、何だよ。この動画……」
心底ドン引きした顔で俺を見る。
「えっ? ただ子どもが目隠しして子どもにご飯を食べさせてもらっているだけの動画じゃん」
俺はその反応に少しムッとしてそう返すと、大神は何とも言えない表情をした。
俺は動画編集を再開する。多分、この動画はあまり伸びないだろう。
でも、1再生0.1円が相場という噂がある。本当だったら、150回再生させれば5円チョコが三枚買えるはずだ。
それでも腹の足しにはなるし、俺にとっては面白かった出来事になるはずだ。
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