美味しい方へ

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 俺は大きく溜め息を吐いた。 「まーだ悩んでいるのか」  大神がそう言って缶コーヒーを渡す。俺はハハッと力なく笑い、それを受け取った。 「いいじゃん。堂々と貰っとけば。動画の中身以外は殆どお前がやってるんだろ?」  大神はこう俺を慰めてくれるけれど、いまいち納得できなかった。 「いや、動画っていうのは編集より内容の魅力が大事だって言うし……」 「――お前、子どもが目隠しして子どもに飯を食わせてもらっている動画に魅力感じてるの?」  俺は何も言えなくなる。それに大神は大きく溜め息を吐いた。 「小杉原は本当に色々と下手だよな。――儲ける方法、教えてやろうか」  俺は大神の言葉に目を丸くして「儲ける方法?」と聞き返した。彼がこういう提案をするのは珍しい。 「パーティーがあるんだけど、行ってみないか? 折角だから食べるリハビリも兼ねてさ。どうせ、あんま食べてないんだろ?」  実際大神の言う通りで、俺は素直にその提案に乗った。  パーティーというのは初めてだ。もしかすると、生まれて初めて行くのかもしれない。  ただ、このパーティーはどうやらホームパーティーで、妙に生活感があるリビングで俺は唐揚げを見ていた。  誘われて三日後、俺は知らない人間だらけのパーティーで参加者は黙々と唐揚げを食べている。  この家の主やパーティーの主催が誰かわからない。やけに女性が多い気がする。部屋の片隅に同じロゴマークのサプリメントの箱が積み重なっている。 「なあ、大神。これって」  いわゆる連鎖なんとかかんとかって奴のパーティーなんじゃ……。 「経験ってさ、何者にも変えられないんだよね」  そう言い掛けたとき、大神は淡々と語り出す。 「実際にやったり見たりして、初めてわかることがあるから。だから、お前にも経験して知ってもらいたいんだ」  もしかして、これっていわゆる勧誘されている、のか……? 「カモの見分け方を」  そう考えを巡らせていたら、予想外の言葉が飛び出してきた。
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