声実在化アプリ

「ハル姉の奴め、本気で叩いて来やがって……おかげで晩ご飯食べ損なっちゃったじゃん」

　恋人と別れたばかりの姉に、昨日の今日で配慮のない台詞を吐いた私も悪いのだが、だからと言って可愛い妹に対して暴力を振るうなんて年長者として自覚が足りない。

「くそう、こうなったらゲームでもして気を紛らせてやる」
　今年四月の引っ越しで初めて出来た自分の部屋に、一人きりで閉じこもった私は充電途中だったスマートフォンを勉強机からもぎ取ってばたりとベッドに倒れこんだ。こんな気分で大人しく勉強なんて、やっていられる訳がない。

「開けない、なんで？　メンテ中？」

「……再開は明日とか、なんなのよもう、やってらんない」

「はああ、もやもやする。なんか新しいやつ出てないかなあ……」

「ん……なにこれ、声、じつざいか……あぷり？」