Home Sweet Home

1/10
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

Home Sweet Home

「こんな田舎町になんの用だい、旅の人」  田舎訛りのスペイン語。畑の近くの道で野菜を売る親父さんが僕を見据えた。ペルーの首都リマからバスを乗り継いで数時間。ようやくたどり着いた。周りの人の目は明らかに余所者を見る目だ。背中にしょったバックパック。英語のガイドブック。主要な観光地であるマチュピチュも、ナスカの地上絵も、こことは違う方向だ。仕方ない。こんな小さな町に来る旅人はそういまい。 「Hola. 僕は旅人だけど、余所者じゃないんですよ、親父さん」  親父さんが目を見開く。郷里の訛り。遙か彼方からやってきた旅人が紡ぐ、耳慣れた音の響き。 「ここで生まれたんです」  僕は微笑んで、僅かな記憶に残る空を仰いだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!