第一章 メイド編

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『勝手にΩとデキちゃって当主に勘当されて……』  それって、もうΩと付き合っているってこと?だとしたら番の人なの?ん? 待てよ、勘当を言いつけた人が当主って事は三兄弟のお父さんで園城家の総当主だ。そんなまさか、勘当した息子の花嫁を探すなんて話が噛み合わない……。  はっ!これは誘導か?誤った情報に誘うための罠ですか!?  そもそも良く考えたら、天下一で国一の御曹司が勘当だとか家出だとかあるわけない。    危なかった~!本気で信じてしまうところだった。これは、花嫁候補としての策略だな!?  侮れん、美人メイド! 「策略にはのらないですよ」 「ん~君、見かけに寄らず強いねぇ。僕も張り合いが出ちゃうなぁ」 「張り合いですか!俺もですよ!美人メイドさんっ」  俺たちはめらめらと炎の視線を合わせた! 「僕は美人メイドなの?……ふふ、それもいいけどちゃんと名前を憶えて欲しいかな」  名前……美人メイドって認識してたから気にしてなかった! 「では、お名前は?」  一応、ライバルでもあるから、いろいろ探って見たい。 「んー、それじゃ、かいちゃん♡って呼んでもらおうかな。ハート付けてね」 「かいちゃん、ハート。」 「なんか可愛くない言い方だね」  それから僕たちはメイドの長…いやボスに「あなたたち何処をうろうろしていたの!?探してたのよー!」と鬼の形相で怒られたけど、なんだかかいちゃん♡と一緒にいると楽しい。    ライバルなんだけどなぁ……。 ☆ ☆ ☆  園城家に来て初日にもかかわらず、御当主や御曹司も姿を現さなかった。    なんてことだろう、俺のいるお屋敷は別荘なのでいつ見えるか判らないなんて!  母さんに定時報告を頼まれているけど何も話す材料が無い。だって3人の御曹司の誰一人見ることも噂を聞くことも出来なかったんだから。  こっちからさりげなく聞いたら、細いミミズのような目だったのが唐突に大きく開眼したベルボーイや、楽しそうにころころ笑うメイドたちが衝撃な悲報を聞いたかのような哀しい形相になって……なんなの、もう。  兄弟の話ってタブー?……脳内にかいちゃんが語っていた三兄弟の醜聞スクープが巡ったけどすぐ頭を振った。  はぁ……俺の居るところは本宅じゃなくて別荘かぁ、ずーと御当主も現れなかったら本格的にメイド修行になりそう。なんだかなー。  かいちゃんは「大丈夫。次期に現れるから楽しみにしてようね」なんて喜々として言う。  しっかしかいちゃん、どこからそんな情報をくすねてくるんだろ?うー…ま、負けれられなんだからっ  寝室のメイド部屋は新人でも無駄に広い個室を与えられた。冷蔵庫もミニキッチンもあるしソファなど家具付き!トイレシャワーだって一週間くらい籠城しても過ごせそう、さすが名門!  かいちゃんは車で通いのメイドらしいので家に帰ってしまったし、話し相手が居なくて寂しいな……。
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