プロローグ

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 俺は男としてこの世で生を受け、この日、人生を成型するという第二性検査をして『オメガ性』の認定を受けた。  寝耳に水――その結果にただただ唖然としてる。  両親はβ同士だったので当然自分はβだと楽観していた。  そもそもΩ性って何万分の一の割合の希少価値な存在で、平凡に暮らしてきた俺にはまるでピンと来ない。 「俺、子供産めちゃうの?キャッ!」  そんな情報しかわかってない。完全に勉強不足だ。  パーン 「瀬那(せな)、おめでとう!」 「Ωやったわね!さすが私の子だわっ」  パパッーン  家に帰ると突然、両親にクラッカーを鳴らして出迎えられた。  ドアを開けたらパーンって吃驚するじゃないか。父、仕事は?  早々にセンターから既に両親に連絡があったらしく、リビングには幼稚園の何かのイベントのようなキラキラ可愛らしい飾りつけ、そしてテーブルにはお赤飯とケーキ、クリスマスと正月がいっぺんに来たようなご馳走……インスタ映えを狙ったかのように並んでいた。  ケーキには『おめでとう、オメガちゃん♡』の文字。だれだオメガちゃんって。  そもそも、Ω性になってしまった息子を祝福されるほど歓喜されるものだったっけ?  両親の説明ではΩは世にはメンドクサイ性だけど、幸せになれることもあると言う。 『アルファの血統の良いお婿さん』を見つけて、その『番』となる事だという。  『番』とは発情期にその…おしべとめしべが合体する時にαがΩの美しく美味しそうな色白の項を噛むと発光して鎖が浮かび、二人は深く繋がれて運命の番になるそうだ。  母さんは話の途中、めちゃくちゃ深い溜息をつくと胸に両手をクロスしだして乙女のように頬を染めている…今はやめて、早く説明再開して。  そして、愛し合っている番の子供も産むことが出来て一族繁栄につながりΩも一生幸福に暮らせる。めでたしめでたし……って言うけれど、そんな簡単な話なのだろうか? 「就職難の今世ではβよりはΩの方が人生を巧く操作できるんだぞ」 「そうよ~しがない年収300のパパよりはこの上ない上級の上、特級クラスのアルファ御曹司を見つける方が瀬那は幸せになれるわ、これは絶対よ!」 「ママ…痛いところを強く言われてパパは複雑だよ」 「あら、ふふ。でもパパの愛があれば年収300だって幸せだけどねっ」  愛があればって……深い。 「ママは明るくて前向きで可愛いけど、策士なんだからなぁ」 「違うわよ、私の中に金の麒麟と屏風が見えるの。普通では一生拝めない程の最上級のアルファ男を探すわよ!たのしみにしてて、瀬那!」  母はとにかくどこか絡まったポジティブな人だ。  そんな二人は息子を前にイチャイチャしだした。
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