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「もうこんな時間」
思いがけないほど速く、時が過ぎ去っていた。帰らなくては。由紀は急いでベッドから起き上がろうとした。
「もう少しだけ」
彼が由紀を押し留めようとする。
「子どもたちが待っているから」
「幼稚園児じゃあるまいし、大きな子どもなんて放っておいたほうが彼らも喜ぶよ」
「上の子はね。友だちも多くて心配ない。だけど下の子は引っ込み思案で、まだまだ子どもなんだ」
「一緒に暮らしたい。そんなことを言っているわけじゃない。あと十分、せめて五分だけ。俺を抱き締めて」
「五分抱くと、五分じゃ済まなくなりそう。だから、ねっ」
由紀はベッドから足を下ろす。
彼の部屋。二人が愛し合うために、新たに購入したと耳元で囁かれたベッドを由紀は離れていく。
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