私はオムライスが大好きだ

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「お会計お願いしまーす」 先に会計へと私が移動すると遅れてポニーテールの店員がやってきた。 (なんでまた腕と足が一緒なんだろ……) ま、突然客が泣いてたら緊張だってするだろう。申し訳なさでレジに着いた彼女と同じく顔を伏せる。 「千五百円となります」 「あ、じゃあ、二千で」 千円札を彼女に渡し、彼女はレジを打つ。『お釣り五百円』の表示を見て私は手を待っていた。 しかし、伏せたまま動かない。レジの故障でもあったんだろうか? 「あの……」 「ちょっと待ってください!」 いきなり出た大声にビックリしていると店員はペンを持ち、レシートにサラサラと何かを書き始めた。私はこの時、この店ならではの手続きかと思って何の疑問も持たなかった。 「あ、あの」 レシートと五百円玉が私の手に乗せられる。彼女の手は熱く、柔らかかった。 「オムライス……作ったの、あたしなんです。食べてくれてありががちょ、ござ、いました、」 「い、いえ……美味しかったです」 頭を下げてお礼を述べる彼女に圧倒され、こちらもぺこりと頭を下げて財布にレシートとお金を入れようとした。ーー文字を見るまでは。 (また、来て……ください?) そこには何やら番号が書かれていた。 「ありがとうございました!またのご来店を心からお待ちしています!!」 「こ、こちらこそありがとう……ございました」 まるで嵐のような出来事に鈴の音がしたことに気付かなかった。 (どうしたんだろ……あの子) 「でも、可愛い子だったな」 体の向きを変えると入口にあるランプが暖色になり、カフェを照らしている。窓からはコーヒーでくつろいでるサラリーマンが見えた。 「……よし、帰るか」 秋の装いだけでは少し寒い季節。肌に当たる風はひんやりするし、手袋しないと指先が冷えるけど体の内からぽかぽかしていた。 (帰りにスープでも買って行ってあげよ) 今夜はぐっすりとよく眠れそうだ。そんなことを考えながら私は家までの帰路を歩いていた。 だから、まあ……あれがカフェの番号じゃなくてあのポニーテールの女性の番号だったり、その子があの料理人を目指していると知るのはもう少し後の話になるんだけどね。 (あ、そうだ。お父さんにケチャップオムライス作ってあげよ。メッセージ付きで) 因みに私はケチャップ派だ。
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