限りなく透明な心

2/41
前へ
/41ページ
次へ
お母さんのお腹の中にいる間にだけ開いている血管が生まれると同時に閉じてしまう。その血管を広げたままに出来る薬が10年前に開発された。港ちゃんの細い腕に針が刺され白い液体が24時間絶え間なく港ちゃんの身体の中に注がれる。 ( 痛いだろうな。可哀想に。ごめんなさい港ちゃん、元気な身体に産んであげられなくてごめんなさい。) ピーピーピーピーピーピーピー、ビビビビビビビビ 24時間、港ちゃんの身体に繋がれた機械の音が響く病室で富士子は気がおかしくなりそうだった。ヒドい虐待をする両親の元に生まれて育った富士子は幸せな結婚を夢見て大人になった。やっと結婚出来て子供も授かり普通の幸せな生活を送る事が出来ると楽しみにしていた。 ( 優しいママになりたい。) と、富士子は心に決めていた。街で見かける普通の幸せな人達。学校や職場にいるたくさんの幸せな人達。でもなぜか生まれた時から富士子は幸せではなかった。富士子は普通の幸せな暮らしを知らない。夫と結婚して普通の幸せな子育てをしてみたかった。なぜか富士子の手の中からこぼれ落ちる砂のように、すくってもすくってもすくえない水のように幸せは富士子の元から消え去ってしまう。でも出産した今思い出してみるとオカシナ事がたくさんあった事に気がついた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加